「条件女子と戦う戦士ジェロニモ」

昔々アメリカに勇者がおった。本名は誰も知らねど呼び名はジェロニモ。
アパッチ族のおかしらさんからとったお名前じゃ。
研究者として人並み以上の稼ぎがあったが、それを目当てに彼のもとに寄って来る者たち、
そしてそうせざるを得なくする世の中に辟易しておったそうじゃ。
結婚を前提として交際を申し込まれたとき、その女には、所得が1/3の金額に落ちたが、
収支はマイナスにならないから生きては行ける、それでよかったらお願いしますと答えたそうな。
女は一瞬、得られたはずの富が幻だったことに衝撃を受けながらも、
本当に自分自身が欲していたのは、ジェロニモの稼ぎではなく、その人そのものであることを瞬時に悟った。
エビフライのころものような偶像ではなく中心に据えられたエビそのものを愛する自分の心に気付いた。
女の母は、最初はジェロニモならば安心して暮らせるわねと祝福したものの、
女が一連の話をしたところ、手の平を返したように、やっぱ今すぐに別れなさい!と言ったとのことじゃ。

その話を聞くとジェロニモはこう言った。
「お母さまの反した手の平を、いまいちど返させるだけの良い材料はある
(女にもまだ話さないが、所得は1/3になど落ち込んではいなかった)。
しかしそれによりお母さまが反した手のひらをいまいちど反し直すことは望みません。
人は誰でも資本主義という大きな偶像にすがりつきたくなります。
それは社会悪により仕方なくそうさせられることもあるはずです。
しかしそれに抗い、乗り越える力にこそが、人と人が心を通じ合わせる力そのものです。
ゆえに、貴女が瞬時にそうしたように、お母さまも、時間をかけてでも思い返すときがきたならば、
そのときが対面する時です。私はいつでも門を開いています。」
しかしそのあと疫病が蔓延し、ジェロニモもその犠牲となった。
そのお母さまが喜んだのか、悲しんだのか、答えは風に吹かれどこかに飛んで行ってしまったのじゃ。



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